そのグラスは主人に愛され
    グラスも主人を愛した
 
 
 
 


毎晩琥珀の輝きをまとい
お月様のように削られた氷で
やさしい音色を響かせる
 
主人はひとり静かに 一日を振り替える
今日を楽しく締めくくる 一口また一口
そのくちづけは
不思議と主人の心に平安をもたらした
 
 
 
「 どんな日であろうと
 欠かさずに付き合いを重ねて来たが
 おまえと飲んで
  つまらなかった事は年に一・二度しかなかったな
 これだけ惚れ込んだのだから
 生涯この楽しさを保つ努力は惜しむまい
 
 いづれ 俺が死んでしまった後
 おまえは空っぽになって 割れてしまうかもしれないが
 どうかその時は誰かを傷つけるような事はしないで
 この琥珀の時間を思い出しておくれ 」
 
 
 
この一口が
どれだけ俺に誇りを与えてくれた事か
 
美味しい上にありがたい
こんなにいいもの そうないだろう
 
と 微笑って もう一口
 
 
 
その主人はグラスに愛され
主人もグラスを愛した
 
 
 
 
 
 
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